はねゆきノート

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【マンガ】高野苺『orange』~多くの後悔をして、ほんの小さな喜びを得る

漫画『orange』を読みました。

舞台は長野県松本市。高校生の菜穂のもとに、10年後の自分から手紙が届きます。
手紙には、転校生の翔が事故で死んでしまうことや、未来に後悔しないため・翔を救うためにするべきことが書いてあり、菜穂は戸惑いながらも勇気を出して翔と向き合っていきます。

では、感想戦です。

orange(1) (アクションコミックス)

orange(1) (アクションコミックス)


当たり前のことを言いますが

未来の自分から、後悔しないためには、ああしなさい、こうしなさい、という指示の手紙が送られてきて、少なくとも手紙の効力を信じ始めてからは、基本的に手紙の言う通りにやっていくわけです。
そして、裏目に出ることもあるけれど、大体は手紙のおかげでうまくいく。それで結局手紙に依存し、言う通りにしていく。
そこに今の主人公の意志や成長はあまり感じられず、私は少し物足りないなと思ってしまいました。

当たり前のことを言って恐縮ですけれど、人生は一度しか生きられないので当然影もあり、影があるからこそ光が輝くわけです。
決して取り返せない後悔があり、挫折があり、全然思い通りにならないまま、人生は容赦なく続いていきます。それはそれは非効率で不合理で、過去の自分に手紙を送りつけたくなるくらいに(笑)
けれどそのときはそのときで精一杯の自分だったのですし、そうしてたどり着いた現在地にも一片の光はあり、その光は、こうやって生きてこなかったら決して手に出来なかったであろうもの、なのです。
たくさん失敗し、後悔をし、犠牲を払って回り道をして、ほんのささやかな気づきや喜びを得る…というのが本質なのです。

だから「未来からの手紙」という道具だてや、それによって好転していくストーリーが、実人生に比して安っぽく感じられました。
同じ時空ネタだったらこっちの方が好き。

過去の自分に手紙を書くという「慰藉」

一方で、「過去の自分に手紙を書く」という行為には、それなりの慰藉があると思うんですよね。
たとえそれによって何も変わらなかったとしても(だって現実では過去は変えられないのですし)手紙を書くという行為そのものに、かなしみや後悔を少しなりとも癒す力があると思います。
ですから、26歳になった主人公たちは、自分の出した手紙が過去に届いたかどうかすら確認できないけれど、ある程度は過去に決着をつけることができる。
それは読者の慰めでもありますが、何より作者の慰めである、という印象を受けました。
特に根拠はありません。



まぁ、私が16歳の自分に手紙を送りつけたところで大人しく言うことを聞くとは思えません。アホなんだから。
アホだったけど、まぁ、精一杯頑張ってはいた。というか、ポンコツながら10年がむしゃらに頑張ったから、今はそれなりに強くなれた…と、過去の自分を肯定したほうが、精神衛生上よろしいかと。

ぐだくだ(笑)
以上はねゆきでした。