はねゆきノート

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【仕事のもやもや寓話】「どうぶつ園のゆううつ」

本日はいきなりですが「仕事のもやもや寓話」をお送りします。

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「どうぶつ園のゆううつ」

先月、キリンさんがクビになった。
キリンさんはわれらがどうぶつ園で経理や受付を担当していた。美人でいい子なんだけど、ちょっともの覚えが悪かった。園長いわく「来客数が減少したのはキリンさんの計算にミスが多いせい」なんだそうだ。それでクビになった。
そういえば、半年くらい前にゾウさんも、自己都合で辞めていった。あれだって、いづらくされて退職するよう仕向けられたようなものだ。ゾウさんはショー担当なのに、誰にもショーで見せる芸を教えてもらえなかった。園長は「教えてほしければ休日出勤をして芸を学べ、仕事とは与えられるものじゃなく取りにいくものだ」と言っていた。ゾウさんは「休日は休みたい」イマドキのワカモノだったので、かちんときて転職してしまった。
その半年くらい前にもカバさんが、なかば追い出されるように転勤していった。カバさんはいいやつだけれど要領がよくなく、寝坊することもあった。園長はそのことで、ずっとカバさんを叩いていたのだ。

こうしてみると、うちのどうぶつ園にはどうぶつが10匹もいないのに、ここ1年で若手のどうぶつばかり3匹も追い出したことになる。

追い出しの前には必ずバッシングがあった。
何か問題が起こるたびに「全部キリンさんのせいだ」「ゾウさんはやなやつだから」「結局カバさんがちゃんとしてないから」
…もちろんそいつ(ら)にも悪いところはあった。言ってしまえば、かなり脇が甘かったし、隙だらけだった。なので、事あるごとに(たとえば来客数が減ったとか、収益が落ちたとか、クレームがあったとか)、犯人だ、原因物質たと断定された。園長は集中的にそいつを吊し上げたし、周りのどうぶつはみんな黙っていた。
みんなが心の中でどう思っていたかは分からない。が、自分が吊し上げられないことにほっとしないどうぶつはいなかった、と思う。少なくともわたしはそうだった。
みんな自分を守るために、ますます犯人の特定に躍起になった。問題が起こると、まずは「誰のせいか」という議論になって、犯人を決めて叩いて終わりにする、というような状況が続いた。それでも同じような問題は何度も繰り返し起こり、「犯人」はますます追い詰められ、退職に追い込まれていった。

そして気づいたら、次はわたしの番だった。

わたしだって今まで、不器用なりに頑張ってきた。仕事が終わらなければ率先的に休日出勤もしたし、園長の厳しい叱責にも耐えてきた。
もちろんかなりミスはした。何よりも悪いのは、チケットのノルマを売り切れないシーズンが続いたことだ。また、わたしのショーは客入りがよくなかった。
園長は、「お前はどうぶつ園には向いていない」という。「お前の思っていることなんか全部分かる。もちろんお前が辞めようと思っていることはお見通しだ」(もちろん辞めるなんて一言も言ってないが、園長はこうやって梯子を外すのだ)。
でも、「自然界に戻ったってどうせお前なんかだめだ」ともいう。どうぶつとして生きていく基礎がなっていない、お前はどうぶつ園のお荷物なんだ…と。

わたし自身、自分以外の人間が吊し上げられている間は、かなりほっとしていた。消極的に状況に加担した、といわれても仕方がない。と同時に、多くの案件がかなり理不尽にわたしのせいにされた。理不尽だ、という感情をあらわにすると、「感情を表に出すな」と怒られた。

わたしはチケットを切りながら考える。
わたしたちは、今まで3匹のどうぶつを、どうぶつ園が上手くいかない「犯人」ということにして、とにかくバッシングをして追い詰めてきたが、何も解決しなかった。結局来客数は減る一方だ。
わたしを追い出したって、たぶん同じことだろうと思う。何の解決にもならないのに。

そう、どうぶつ園のしくみ全体を変えなければ。どうぶつ園には若いどうぶつもいれば、そこつなどうぶつもいる。上手くいかないことを個人の能力や資質に帰している限り、そういうメンバーを含んだ全体を上手くいかせることは難しいだろう。
それからやはり、上手くいかないことを「誰か一人の犯人のせい」にするのはよくない。全部せまい園内で起きていることだ、程度はちがえど、みんなが少しずつなまけて、さぼって、今の状況に加担している。
今はみんな「私は悪くありません、悪いのはあいつです!」と叫ぶだけで、問題を解決しようともしないし、自分にできることを考えるわけでもない。それでは何もよくならないだろう。ただ一人ずつつぶされるだけだ。

みんなはどう思っているのだろう?

とにかく園内で、わたしが3月末で退職することを疑うものは誰もいない。
すでに、梯子は外されているのだ。

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「仕事のもやもや寓話」でした。


以上はねゆきでした。