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【読書】山井太『スノーピーク 「好きなことだけ!」を仕事にする経営』

山井太『スノーピーク「好きなことだけ!」を仕事にする経営』を読みました。

ビジネス書なのに、なんか感動した…。
アウトドア好きでもキャンプ好きでもないのに、なんだかアウトドアがしたくなっちゃいました。

表紙も製本も綺麗でした。書店員さんも、ごちゃごちゃ分かりづらい棚から一瞬で見つけてきてくれましたよ。たぶん素敵な本だから場所を覚えていたんでしょう。
細かく作り込んで品質にこだわるメーカーだということは、本好きなら手に取った瞬間分かります。

スノーピーク「好きなことだけ! 」を仕事にする経営

スノーピーク「好きなことだけ! 」を仕事にする経営

スノーピークはハイエンドなオートキャンプ用品を手がけるメーカーで、新潟に本社があります。
アップル製品にも通じる高品質で洗練されたプロダクトの数々に、熱狂的ヘビーユーザーも多いのだとか。

一読しながら、業界こそ違えど、私の勤めている会社とけっこう共通点あるなぁと。

同族経営で、今の社長は創業者の息子
・地方発。本社も地方都市にある
・全国展開しているが、全国の支部はすべて直営
・競合に対して高価格で、ハイエンドを標榜している

なのにどうしてこんなに違うんでしょう。

つらつら考えてみるに、一番の違いは「スタッフが誇りと主体性を持って働けているか」にあるのかな、と。


この本では、スノーピークが重視する「ユーザーの視点に立って」「ユーザーの笑顔、幸福を目指して」ということが徹底して強調されています。
「感動」の根底にあるのは製品とサービスであり、それに尽きる。
背景にあるのはミッション・ステートメントに定めた「自らもユーザーであるという立場」で考える姿勢だ。
スノーピークは全社員がアウトドアの熱心なユーザーばかりだ。私自身ここ何十年を振り返ると、最も少なかった年でも30日ほどはキャンプに出かけているし、平均すると毎年40~50日はキャンプしている。それだけアウトドアが好きだし、ユーザーとして突き抜けていると思っている。

顧客目線でサービスを提供すること。
スノーピークは「自分自身がユーザーとして、欲しいものを提供する」という方針で顧客満足度を高めています。
私の業種では「自分自身がユーザーになる」ということが物理的に不可能なのですが、少なくともスタッフが自分の提供するサービス・自分の仕事に、誇りを持っていなければ顧客満足にはつながらないのかなぁ、と。

顧客満足を追求するには、サービスを提供している本人が、自分の仕事が好きで、誇りを持っていて、幸せでなければならない。たぶんこれって真理だと思うんですよね。
…うちの業界がどこかしら辛気くさいのって、たぶんそもそも「やってる本人たちが不幸」なのが大きいと思うんですよ。
まず休みがないでしょ。
しかも、自分とこのサービスと隣の競合の差異が全然分かりません。コモディティ化してる。
お客さんも「どこも変わらないのにおたくは高いから」と言いますが、私もそう思いますもん。「競合に対する強み、優位性がある」って言いますけど、たぶんあちらさんはあちらさんで頑張っておられて、ほんとはもういろんな面で負けてるのに、価格だけは高い…っていう感じがするんですよね。
お互いにそう思ってるんじゃないかなぁ。
「本音のところいろんな面で陳腐化してるのに価格だけは高いサービス」を、自ら提供し自ら売っているんです。誇りどころか、厚顔無恥にならないとできません。なるべくその真実から目を背けて生きていくしかない。
休みがないのも不幸だけど、実感の伴わないうすぼんやりした優位性とか、社内の誰かの「かくあるべき」こだわり(別に私はどうだっていいこと)とか、あと営業の目標(誰かが決めたらしい、本気か建前かよく分かんないやつ)とかのために休みなく働いているから、不幸感が半端ないのです。これが私の「かいしゃいんとしての実感」ですし、ネット界隈を見てもそういう人は多い気がします。

会社でうまくいっている人は、どちらかというと「その方が人生哲学上ハッピーだから」とか「人生意気に感じて」とかで主体性を発揮しているようです。自社や自社サービスを誇りとしているわけではありません。もはやビジネス書の世界でも、主体性は個人の資質と美意識の問題です。コモディティ化社会ですから、それは致し方ないことなのかもしれません。
ともあれ、不幸感の半端ないスタッフの中には「当事者意識」どころか「被害者意識」を持って働く人も多く、全体的に見て「スタッフが誇りと主体性を持って働く」会社はなかなか少ないのではないでしょうか。
別に特定の会社がどうだと言っているわけじゃなく、どこもそんなもんじゃないでしょうか、という話です(腑抜けですね)。

話が逸れましたが、今の自分の仕事にイマイチ誇りと主体性が感じられないからこそ、スノーピークの経営哲学を読んで感動したんだと思うんです。
ただ、これは会社のせいばかりにはできません。サービス業は自分自身が商品である以上、自分の努力不足やちょっとした怠慢が、積もり積もって「自社のサービスに誇りを持てない」「主体性が持てない」というマインドにつながるわけです。反省しなければなりません。はんせい。

それにしてもスノーピーク
ミッションステートメントに、全社員がコミットして本気でやり抜く会社。
常にユーザー目線で、自分の欲しいクオリティのものを作っていき、他社に対する優位性がはっきりしている会社。
週休2日で、週末には趣味と実益を兼ねたキャンプ…
羨ましいですねえ。

以上はねゆきでした。