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【読書】「大人になりたいのなら、離れるしかない」~岩崎夏海『もしドラはなぜ売れたのか』~

ちょっと前に読んだ本について書こうと思います。

 

『もしドラ』はなぜ売れたのか?

『もしドラ』はなぜ売れたのか?

 

 
もしドラ』の著者である岩崎夏海さんの自叙伝(?)です。

秋元康さんの元で放送作家として働いていた岩崎さんが『もしドラ』を世に出すまでの経緯が詳しく描かれています。
ミリオンセラーとなった『もしドラ』ですが、著者の岩崎さんは、時代の潮目を読み、先行作品を研究することで、「これなら売れる」と確信して書いた…とのこと。ヒット作品を生み出した発想の方法や、岩崎さんがどんな努力をしてきたかがこと細かに書かれています。

なんていうか、凄いですよね。凄まじい。
コンテンツを生み出す発想法や思考法が勉強になるのはもちろんですが、個人的に一番心に引っかかったのは、17年来の師・秋元康さんからの独立を決めた理由について。

 

秋元さんは、ぼくが成長しているにもかかわらず、ぼくへの接し方を変えなかった。というより、ぼくが成長していることに気づいてくれなかった。
(中略)
「秋元さんのところにいたら、ぼくは子供のままでしか見られない」
そのことを知ったぼくは、もし大人になりたいのなら、秋元さんのもとを離れるしかないと思った。そうしてぼくは、「大人になりたい」と強く思った。秋元さんのもとを離れることに不安がないわけではなかったが、「大人になりたい」という思いは、ほとんど抑えがたい欲求となって、ぼくの心を覆い尽くすようになったのである。


「大人になるには、師の元を離れるしかない」

岩崎さんのここでの思いを一言に凝縮すると、こういうことだと思うんですよね(勝手に凝縮してすみません)。

「大人になるには、師の元を離れるしかない」

「大人になるとはどういうことか」「成熟とは何か」。そんなテーマについて日頃からアンテナを張り、考えてきた私にとって、コンテンツメーカーとしての岩崎さんがどんな苦労や工夫を重ねて『もしドラ』を世に出したか…ということより、こちらの方がよっぽど心を揺さぶられたんです。

そうかも、と思うと同時に、違和感もある(だから心が揺さぶられる)。


そうかもしれない。誰にとっても、仕事について人生について人間関係について、様々なことを教えてくれた(くれる)人がいる。社会人になりたての頃から、愛想を尽かさずに常識をたたき込んでくれた(くれる)人がいる。
たとえば、上司の車は見えなくなるまで見送りなさい、とか。晩飯を奢ってもらったら、その場でお礼を言うだけでなく、翌朝一番「昨夜はありがとうございました」って言いなさい、とか。人の話を聞きながらペンをかちかちしちゃいけません、とか。
…まぁそれは半分冗談としても、仕事の仕方人生の処し方を教えてくれた(とこちらが勝手に思っている)人がいて、自分はまだまだ未熟だなぁ、という忸怩たる思いがある。同時に、大きな恩義を感じる。
けれど、「大人になるには、この人の元を離れなければ」なんて思ったことはありませんでした。
それは、私がその人に甘えていたのかもしれません。これからも間違っていたら教えてほしいな、なんて。心の奥底に、親切な人がいつまでも親切であることに対する甘えがあり、教えを必要としない「一人前の大人」にならなければ、という覚悟が足りなかった、のかも。

「大人になるには、師の元を離れるしかない」かぁ…そうかも。

という意味で、「そうかも」と思った、というのが一つ。


自分は、そうは言わないように
もう一つ、違和感もありました。
岩崎さんは当時38歳だった、と言います。彼のようなクリエイターは、才能や時代の空気が複雑に影響し合う特殊な職種なので、大器晩成型ということになるのでしょうが、これをもし自分の身に置きかえて考えてみたら、どうでしょう。
「この人のところにいたらいつまでも子供扱いされてしまう。大人になるために独立しよう」と、38歳の自分がつぶやいている姿を想像する。

正直いやです。いやじゃないですか。いやの理由はいろいろあるけれど、

・もうちょっと早く成熟してもおかしくないだろう。
わたしはただの会社員なんだし、大器晩成というにも限度があるし、38歳にもなって「大人になりたい」なんて言っていたら、ちょっと情けないような気がします。少なくとも26歳の現段階ではそう思います。もう少し歳をとると、考えも変わってきそうですが…

・それは師匠のせいなのか。
これも年齢的な問題ですが、38歳にもなって、「○○さんは私の成長に気づいてくれない、子供扱いしてくる。だから独立したい」って言い草。特殊な職種である岩崎さんはともかく、一般人の私が同じことを言ったらどうでしょう。
ちょっと、ふざけんな、って感じがする。そもそも、「成長を気づいてもらえない」とか「子供扱いされる」とか、一人前に扱われないことを人のせいだと考えてしまうその考え方がめちゃめちゃ「子供っぽい」じゃないですか。


というわけで、「大人になるには、師の元を離れるしかない」という考え方は、そうかも、と思う一方で、
30代、40代になった自分は、そうは言わないように、20代のうちにしかるべき成熟を遂げたいなぁ、などと思うわけであります。


コンテンツメーカーとしての執念、アイデアの出し方、分析法なども非常に勉強になります。
表紙もインパクトがあります。お通夜かと思いました…
ぜひお手にとってみてください。


以上、はねゆきでした。